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部門長あいさつ

 九州大学の物理学科は、旧九州帝国大学であった1939年(昭和14年)に理学部設置と同時に創立されました。物理学科内には、物理学コースと情報理学コースの2つのコースがありますが、このサイトは物理学コースおよび大学院・物理学専攻を担当している物理学部門の公式ホームページです。

 1939年の創立当時、「理論物理学」「実験物理学」「力学及び熱力学に関する応用物理学」「光学及び電気学に関する応用物理学」の4講座がありました。物理学を含む自然科学において、多様かつ複雑な自然現象の中に潜む基本原理や法則を発見するための「実験」と、原理や法則を形式化・体系化し新たな現象を予測する「理論」は両輪をなします。九州大学においても、基礎科目である「力学」「電磁気学I」「量子力学I」「統計力学I」は演習科目をセットにした必修科目となっており、基礎的な学問の学修を重視しています。また、九州大学はメガサイエンスの1つである素粒子・原子核実験において不可欠な、加速器と呼ばれる大型実験設備を有する数少ない大学の1つでもあります。学生実験(3年次の必修科目)において、この加速器を用いた実験を「必ず」経験できるのは国内唯一であり、自然科学としての物理学における実験も同様に重視しています。

 創立当時の4講座と現在の基礎4科目の違いは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのパラダイムシフトを反映しています。19世紀後半には、ニュートン力学に始まり、熱力学、統計力学、電磁気学の発展・構築により物理学はほぼ完成したと考えられていました。しかしながら、これらの枠組みでは説明不可能な現象・実験事実に基づき、相対性理論や量子力学といった時空・物質に関する新しい理論が構築されました。その後、素粒子や原子核といったミクロ(フェムトメートル)の世界から、137億年に渡るマクロな宇宙に至るまで、物理学の進展は我々の自然観に大きな変革をもたらし続けています。さらに、これらの進展はエレクトロニクスやナノテクノロジーに代表される現代の科学技術の基礎をなしており、我々の生活を豊かにしています。両輪を上手く回し、論理的思考に基づき本質を捉え、解を「創造」する物理学の手法は、理学(化学、生物学)、工学から経済学等にいたる幅広い研究対象に適用され、物理学の地平はますます広がっています。また、成熟しグローバル化した社会においても、このような手法を身に付けた人材は強く求められており、その重要性はますます高まるものと考えています。

 物理学部門には現在約50名の教員が在籍し、17の研究グループに分かれて、素粒子物理、原子核物理、宇宙物理などの基礎粒子系分野から、電子などの量子系、及び柔らかい物質群を対象とした複雑系物性物理、また生物物理などの新領域分野まで、物理学全般を網羅した分野の研究と教育を実施しています。各グループは、理学部の理念に基づき「自然の様々な謎へ実験的研究と理論的考察の両面から挑戦」し「人類の知的共有財産を構築する」ことを目指しています。知的共有財産の例として、教科書に載っている「周期表」を挙げることができます。周期表の第7周期、第13属を占める「113番元素ニホニウム」の合成・命名権獲得のニュースは記憶に新しいところですが、命名権を獲得した森田浩介博士は九大物理の卒業生であり、本部門の教授を務めておられました。現在は高等研究院の特別主幹教授として活躍されています。森田博士以外にも、80年の歴史を持つ九大物理は、これまでに多くの著名な研究者が在籍したところであり、また、多くの卒業生を輩出しています。これらの先輩のご活躍を刺激とし、教員・学生が一丸となり、創造力をもって、物理学の新しい発展に貢献していきたいと考えています。

 近年のAI技術の発展やパンデミックを受け、社会は地球規模での変化の時代を迎えています。昨日までの常識が、明日には覆ることも珍しくありません。急速に変化する先の読めない時代を生き抜くために必要なのは、決して色褪せることのない「基礎的な知」を拠り所に、前例にとらわれず「自らの頭で考え抜く力」です。当然とされていることを疑い、課題を発見して解決法を考える。研究における創造力も、まさにこのプロセスの繰り返しから生まれてくる気がします。大学での研究活動はもちろん、実社会へと漕ぎ出してからも、皆さんは幾度となく未知の複雑な問題に直面するはずです。その長い航海の中で確かな羅針盤となる「自ら考える力」と「自分自身を信じる力」を、物理学という普遍的な学問を通してぜひ培ってください。豊かな自然を抱く伊都キャンパスは、勉学に没頭し、充実した大学生活を送るのに最適な環境です。物理学への尽きない好奇心と未来への希望をもつ学生の皆さんとともに、研究の楽しさを分かち合えることを心待ちにしています。