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卒業後のわたし

九大物理と就職

就職に強い九大物理

 学部・大学院を卒業後は、社会人として新たな人生をスタートすることになります。ここで社会人とは、職を得て自立した生活を営むことで、多くは民間企業に就職します。理学部、とりわけ物理学科は企業への就職に不利であると思っている方がいますが、これは大きな勘違いです。以下に、昨年度の物理学科への求人と実際に就職した人の比較を載せますが、学生1人あたり8社から求人があり、引く手あまたです。1社が複数の求人をしている場合もありますので、有効求人倍率は何と約30倍にもなります。

 このことから、如何に九大物理が就職に強いか分かると思います。

企業に必須の物理人

 物理への求人の多さは、社会の変化に伴い企業が物理人(いろいろなことを物理の視点で考えることの出来る人を指します)いなくして立ちゆかなくなりつつある事と関連しています。ここでの社会の変化とは、一言でいえばグローバル化であり、全ての企業は世界レベルでの競争にさらされている状況を指します。このような状況では、これまで日本が得意としてきた「ものまね」や「改良」では勝つことは難しく、真に新しい製品の開発が求められます。開発には常にリスクを伴いますが、そのリスクを最小限にとどめるためには、アイディアを出して基礎研究を行う段階で、基礎から物理的に(論理的に)対応する以外に方策はなく、それゆえ物理人が必要とされます。

 もちろん、質の高い物理人が求められていることは言うまでもありませんが、求人の多さは九大物理がそのような質の高い人材を輩出し続けていることの現れです。

学部卒業後の進路

 学部卒業生の約9割は大学院に進学し、物理の素養を深めます。
 進学者の約8割は本学の大学院に進学します。

なぜ大学院に進学するのか?

 社会の高度化に伴い、企業などの就職先が求める素養も高度なものになっている事が背景にあります。
 物理は基礎であるがゆえ、その素養は「広く・深く」ある事が求められます。応用の場合は高度な専門性のみが要求され、「狭く・深く」でもよい場合もありますが、物理人の強さは「広さ」からくる守備範囲の広さ(短いサイクルでの新製品開発への対応能力)にあります。
 「広さ」と「深さ」を両立させる近道というものはなく、大学院修士の2年間を使い高度な素養を身につけます。

学部で卒業して就職するのは不利ですか?

 そのような事は全くありません。
 学部卒であっても求人は多く、就職に問題ありません。

教諭(先生)になりたいのですが?

 物理学科では、中学校教諭第一種免許状の理科と、 高等学校教諭第一種免許状の理科が取得可能です。
 卒業後、教諭になる学生も定常的にいます。
 日本が今後も科学技術立国として世界をリ−ドしていくためには、次世代を担う子供達が理科や科学に興味をもたせ、それをのばすことが必要です。そのためにも、物理人が中学校や高等学校の教育に携わることは極めて重要なことと言えます。

修士修了後の進路

 修士修了生の約7割が就職します。博士課程に進学する学生も約3割に上り、より高度な専門知識を身につけます。

物理人の就職先は?

 物理は基礎であり汎用的であるため、逆に具体的な職種のイメ−ジにつながりにくいかも知れません。
 比較的つながりが分かりやすい例としては、物性に関する研究を大学で行い、製造業(半導体メ−カ−等)への就職等があげられます。
 また、ミクロな世界を研究する粒子物理学では、加速器と呼ばれる装置を用います。そこで培った素養を活かし、インプランテ−ションによる素材の高機能化をはかる企業など、先端企業に就職しています。
 素粒子理論や宇宙理論などの純粋理論が一番つながりが分かりにくいでしょう。理論というと「紙と鉛筆」というイメ−ジがあるかと思いますが、実際にはコンピュ−タを駆使して高度な計算を行う必要があります。そこでの経験を活かし、ソフトウエア業界などに就職する例があります。
 一見物理とは関係が無いと思われる業種への就職もあります。例えば、物理の記述には高度な数学を使いますが、その素養を活かして投資信託を行う企業などへの就職があげられます。
 このように、物理人は各人の素養や特性にあわせて、ますます広い分野へと就職しています。

就職先は企業に限られますか?

 そのようなことはありません。
 大学院でより高度な素養を身につけた上で、高校教諭になる方もいます。また公務員になる方もいます。
 社会の高度化に伴い、大学院卒業後これらの職業に就職する例は増えつつあります。

物理人を究めたいのですが?

 是非、博士課程に進学してください。
 博士課程では、それまで培った素養をもとに自分で研究テ−マを設定して、自らその分野を切り開いていきます。
 博士号(学位)の取得は、物理のフロントランナ−になったことの証とも言えます。

博士終了後の進路

博士課程までいくと研究職しか就職先はありませんか?

 そのようなことはありません。最近は、博士号(学位)を取得して民間企業に就職するケ−スが増えています。
 修士修了時で就職する場合と博士修了時で就職する場合の違いですが、修士修了時は物理の「広さ」を、博士修了時は物理の「深さ」を活かして就職する場合が多い点があげられます。
 また、博士号(学位)は新しいテ−マを見つけ、分野を切り開き、成果 を出す事が出来る事を意味します。新しいテ−マを「新製品」に置き換えれば、まさに企業が必要とする人材そのものです。したがって博士修了時の場合の多くは、即戦力かつグル−プリ−ダ−(侯補)として就職します。

九大物理出身の研究者にはどういう人がいますか?

多くの方が各分野の最先端で活躍されています。ここでは、以下の3人の方を紹介させて頂きます。

 まず1人目は御手洗菜美子さんで、九大物理で助教をされた後、コペンハーゲン大学ニールスボーア研究所の准教授に着任されました。
 御手洗さんは、統計物理学・生物物理学の分野で、現在、世界を舞台に活躍されています。どのような面白い研究をされているかは、以下の自己紹介文を参考にしてください。
 私は、身近にある様々な現象を研究対象にしており、最近は特に生物に興味をもっています。生命活動は、たんぱく質やDNAといった分子の働きに支えられていますが、その大きさが非常に小さかったり、数が少かったりするために、それぞれがいつも正確に同じ仕事をしているわけではなく、大きな揺らぎがあります。しかし、生物全体としては複雑な機能を実現し、時には揺らぎを抑えて精密に働き、時には揺らぎを利用して振る舞いに多様性が出るようになっています。また、生物一個体の振る舞いだけでなく、生物種の相互作用についても、様々な揺らぎ・変動があるなかで、どういった条件なら種の多様性が生まれ、維持されることが可能かといった問題に取り組んでいます。生命現象における揺らぎはどういう性質か、その中で機能がどう実現するのか、どのような進化過程で機能を獲得したのか、そしてその中に普遍的なルールがあるかといったことは、物理学にとっても大変興味ある問題です。研究内容についてより詳しく知りたい方は、研究室のHPを是非訪れてください。

 2人目は森田浩介さんで、現在、九大物理の教授です(国立研究開発法人 理化学研究所 仁科加速器研究センター グループディレクターを兼任されています)。
 森田さんは113番元素「ニホニウム」を発見された、世界的に有名な研究者です。この113番元素「ニホニウム」は日本で発見された初のものです。森田先生のコメントや「ニホニウム」に関する詳しいことは「国立研究開発法人理化学研究所ウェブサイト」をご覧下さい。

 最後は川崎恭治先生で、九大物理で助教授・教授として活躍されました。
 2001年には、統計物理学分野で国際的に最も権威ある賞である「ボルツマン賞」を授賞されました。
 統計物理学とは、多くの原子や分子からなる物質がどのような性質を持つかを研究する学問で、身近な物の性質を理解するのにも欠かせないものです。一つ一つの水分子の性質は温度によらないのに、その集まりである水は0度で氷になるように、分子の集団は温度などの変化に対して性質を突然変えることがあります。川崎先生は、このような突然の変化の仕組みや、その時の物質の振舞いを理解するのに重要な研究を数多くされています。